釣りのタックル研究室

タックル研究室

ライフジャケットは命綱

ライフジャケットを分かりやすくいうと、救命胴着です。その名の通り命を預かる大事な用具です。足場のよい波止釣りならともかく(場所によっては必要)危険と隣り合わせの磯釣りでは必需品ですし、遊漁船にも着用が義務づけられているぐらいですので、レジャーフィッシングには欠かせないものといっていいでしょう。

今日はライフジャケットの選び方や、装着のコツ、落水時の注意点などを書いてみたいと思います。この章は、海と魚のお話「海難事故を考える」とあわせてお読みください。

ライフジャケットが命を救う

(財)日本海洋レジャー安全振興協会による平成15年度の海難事故調査によると…

ライフジャケット着否別の発生状況

平成15年における釣り中の事故者225人のうち、ライフジャケットを着用していた者は56人(着用率25%)で、このうち死亡・行方不明者は13人、死亡率(死亡・行方不明者の事故者に対する割合、以下同じ)は23%であった。一方、ライフジャケットを着用していなかった者は169人であり、このうち死亡・行方不明者は81人、死亡率は48%で、ライフジャケット着用の効果が顕著に表れている。

↑というデータが出ています。また別のデータでは、着用していた人の生存率は約9割、着用していなかった人の生存率は約5割という結果も出ています。まさにライフジャケットは命綱です。着用するしないで、助かる命も助からないのです。釣りをするならば、釣り竿の善し悪しより、ライフジャケットにこだわるぐらいの気持ちをもちたいものです。

ライフジャケットは絶対ではない

ライフジャケットは体を浮かべてくれることで、溺死から救ってくれます。しかし水温は体温より低いため、夏場でも体温は急激に奪われます。結果、救助が遅れると衰弱死します。ライフジャケットを着用していたのに助からなかったというのは、たいていこのケースに当てはまると思います。要は救助のための捜索ができないような天候条件、遭難したことが誰にもわからないような孤立した条件で、釣りをしないということが、まず安全への第一歩だということは、肝に銘じて下さい。

ライフジャケットが必要な釣り場

どんな釣りでも着用するにこしたことはありませんが、大げさすぎるかな?というケースもあります。そこで筆者が必要と思えるケースを上げてみます。

釣り場 大人 子供
沖磯
外洋に面した地磯
内海に面した地磯
沖釣り 遊漁船
プレジャーボート
筏釣り  
波止釣り 沖の一文字・沖堤
湾内の波止・防波堤
投げ釣り 砂浜
×
×
小磯

◎は筆者が絶対必要と考える場所です。要は車が横付けできるような波止で釣りをする以外は、基本的に着用と考えればよいでしょう。特に小さな子供さんは状況にかかわらず、着用させるようにして下さい。事故に遭ってからでは、遅すぎます。

ライフジャケットに求められる性能

命を預かる大事なものですから、ライフジャケットは国土交通省による型式承認で性能が保証されています。用途別に5つほどありますが、我々釣り人に縁が深いのは…

小型船舶用救命胴衣
7.5kgの鉄片を水中に吊り下げて浮いている浮力があり、頭部を水面上に出し、リラックスして浮いていることができます。遊漁船に装備されているオレンジ色の救命道具はこれです。

構造別では5つほど分類されますが、釣りで普及しているものは…

固型式
身体を水に浮かせるための浮力体に発泡プラスチック等の固型物を使用しているライフジャケットです。ガス等の気体を使用しないため、構造はシンプルです。もっとも普及していますね。

膨脹式
浮力体として、ガス(炭酸ガス等)を入れる気密の袋を持ち、通常は、畳まれているため非常に薄く、コンパクトです。使用する際には、自動(水に浸かると自動的に膨脹)又は手動(作動用の紐を引く)で作動させると、内蔵されたガスボンベから気密袋にガスが充填され膨脹します。また、ガスが抜けた場合などには、息で補充することもできます。首掛け式、ウェストポーチ式等の種類があります。

暑い夏場の釣りでも快適ですし、コンパクトで軽快ですから、ファッション性にこだわるゲームフィッシングの分野で、徐々に採用されてきています。固形式のよさと膨張式の便利さを組み合わせたハイブリット式もあります。

色々ありますが、行政認定の商品ですので、見た目はともかく性能的に問題はありません。なお子供用も販売されいますが、年齢によってサイズが違いますので、購買時は注意して下さい。

釣りのライフジャケット

さて釣り人とは欲が深いものです。一般のライフジャケットは溺死を防ぐ目的だけで作られているので、ポケットのような利便的なものは、一切つけられていません。「必要なのは分かった!しかし、いつ事故があるのかわからないのに、ライフジャケットをただ着用しているだけでは能がないなぁ…」という想いを釣り人なら抱くはず。

釣りの救命胴衣はフローティグベスト
さすが釣りメーカー、そんな想いをくみ取って、ただ浮くだけでない便利なライフジャケットを発売しています。ポケットなど釣りベストの機能を併せ持っているところから、フローティングベストなどという呼び方をするメーカーもあります。

浮力は問題なし
釣りメーカーの作るライフジャケットは、国土交通省の型式形式を受けていないものが殆どです。しかしちゃんとしたメーカーのものなら、浮力7.5kg/24時間以上と表示されているはずです。これは型式認定品と同等の性能を持っていると云うことを表しています。大手釣りメーカーの下請けさんは救命胴衣専門のメーカーさんなので、まず品質は間違いないとかんがえてよいでしょう。

選ぶ基準
浮力性能が問題なければ、選ぶ基準は付加価値性と価格ということになります。残念ながら他の釣り具と同じく、機能・快適性は、確実に価格に比例しています(笑) ここでは笑魚の独断と偏見で選ぶ基準を書いてみましょう。

  選考基準
浮力体 固定式(PVC/ポリ塩化ビニール独立発泡)が一般的。安価な発泡スチールと違って体にフィットする。最近はこれが一般的。
膨張式もコンパクトさで捨てがたいが、メーカーのリコールが頻繁な所を見ると、まだまだ安全性には疑問あり?命に関わる。
ポケット 磯釣り師なら4個は必要。区分け用の内ポケット(ハリス入れなど)が付いたようなものは、結局は不便。シンプルな構造で、どっぷりした大きなものが使いやすい。 ルアーマンなら2個でもよいかも。
ベスト丈 ショートベストは本来は淡水の立ち込み用。ポケットの位置が高くて不便。人にもよるだろうが、個人的には装着感も嫌い。通常の丈が着やすく使いやすい。
ベルト 従来は股紐だったが(ベストの浮き上がりを防ぐ)、最近では、すっきりしたベルト式も多くなった。これも好みでよいが、個人的にはベルトは腹部を圧迫するので好きではない。
便利機能 あれば便利と思うもの(高いベストなら、たいてい標準だよ)
1.携帯用防水内ポケット
2.呼び子付ポケット(緊急信号用)
3.ピンオンリール用タグ
4.ハサミ取り付け用リング
5.メッシュ裏地は夏場は嬉しいね。
6.タオルぶら下げリング(釣り師でないと思いつかんやろな)
7.ペンチポケット
8.夜釣りの多い人なら、ライトポケット
注意点 ファスナーに注意!完全防錆仕様か、プラ製でないとすぐに錆びてダメになる。
サイズ 冬場は着ぶくれするので、買うときは防寒着の上から羽織って余裕のあるものを。大きい分にはベルトでサイズ調整できる。
お好みでどうぞ。個人的には地味目が好きだが、単に海難対策を考えるのならば、漂流中に一番目立つ色であるレスキューカラー(オレンジ)がお勧め。

 

ヒント

買い換えが必要?

救命胴衣は浮力性能が落ちるので、数年以内に買い換えしろとよく云われます。以前は化学繊維でなくカポック綿と呼ばれる自然素材(冬は暖かいのよ♪)が使われていました。これは確かに性能が経年劣化するので、買い換えが必要でした。しかしPVCのようなものはどうなのでしょうか?本当に買い換えが必要ならば、命に関わるだけに「○○年以内に買い換えて下さい」という表示があるはずですが。ないところを見ると問題ないのでしょう。もっともハードな磯釣りでは、コマセで汚れたり潮で痛みますので、3年ぐらいで交換になります。

枕付がいいの?

高級品では枕付のものが多く見られます。落水したときに首が支えやすいというメリットがありますが、その分夏場は暑いです。好みでいいでしょう。

水洗いできるの?

よほど安い商品でなければ、内部の浮力体はチャックを外して取り外しできますので、外して水洗いして下さい。綺麗になります。

予算があれば?

Gore-Texのような完全耐水素材が望ましいです。通常は撥水加工だけですので、雨や飛沫を長時間かぶると、ポケットの中のものが濡れてしまいます。煙草やライターが濡れると悲惨ですよ(汗)

女性向きのサイズがない?

ダイワのグレートバンフ・ファミリーフローティングがお勧めです。5サイズ5カラーで子供さんから小柄な女性までをサポートしています。安価ですが、磯釣りでも充分使える機能を備えていますし、見た目もお洒落です。

冬場は防寒着?

そうです。夏場暑苦しいのとは逆に、冬場は防寒の役目を果たします。浮力材がダウンと同じくデッドエアーを作るので、寒気を遮断するのですね。

思わぬ落水!ついに出番が!

ライフジャケットが必要になるシーンなどに遭遇しなければよいのですが、いざというときのための心構えを書いておきましょう。筆者個人は海難での落水経験はないのですが、海防訓練で何回か飛び込んだことがあるのでその経験と、落水経験豊富な釣友の話しをまとめてみます。

なにより慌てるな!

海水浴に行くときは、平気で頭から水の中に飛び込みますね。慌てる人はいません。しかし同じ状況でも、服を着ているとパニックになります。これが人間の心理です。ですから落水したときは、裸と同じと考えて下さい。たまたま泳いでいるだけだと…これだけでパニックは防げます。また落ちそうになったときは、下手に周りを掴んだりするより、思い切って飛び込んだ方がケガをしなくて済むこともありますので、状況を即座に判断しましょう。必要以上に水を恐れないことです。

磯なら離れろ!

磯は波止と違って地形が駆け上がってるいるので、落水すると次の寄せ波で岩に叩きつけられることがあります。現にそれでケガをした人を見ています。うねりがある時は、何よりいったん磯から離れて下さい。様子を見て助けを待つか、寄せ波の緩い上がりやすい足場を探しましょう。

靴は脱ぐな?

泳ぎやすいので靴は脱げ!と教える人もいますが、ライフジャケットを着用している場合は、まず溺れる心配はないので、脱ぐ必要は少ないでしょう。それよりも靴を脱いでしまうと、磯では足に酷い傷を負います。カキ殻などが密生していたら、足の裏が悲惨なことになり、歩くどころの話しではありません。上がるときのことも考え、状況をよくみて判断して下さい。

足側が浮きます

ライフジャケットを着用していると、体は水中では垂直にはなりません。必ず足の方が浮かび上がってきます。つまり背泳ぎに近い形になるわけです(これが枕の必要な理由です)。これが普通ですから、これにあわせて自分の泳ぎやすい方法で泳いでください。

一人で落ちたら…

周りで見ていた人がおらず、自力で岸にたどり着けなければ、潮に流されるばかりです。体力と泳ぎに自信があればよいのですが、そうも行かないときもあるでしょう。こんな時は、呼び子(笛)が役に立ちます。通りかかった船や、周辺の釣り人に、声を張り上げるより効果的に、急を知らせることができるからです。小さなものですので、ひもをつけてポケットに入れておきましょう。防犯にも役立ちます。ちゃりこは持ってますよ(音が悪い…)。